ここでは、弊事務所が経験した相続関連の事例のうち、皆様のご参考となるであろうものをご紹介いたします。
※1遺産分割
・・・亡くなった人の財産を相続人同士でどのように分けるか決める手続き。
※2利益相反
・・・本来優先すべき立場や義務が、別の利害によって影響を受けかねない状態。
①事案の概要・問題点
長女が、精神障害となり施設に入所するため、弟である長男が、平成28年3月に長女の成年後見
人に就任しました。この時点で母親は亡くなっています(平成27年10月死亡)。
令和3年10月に父親が亡くなったため、相続が発生しました。
そこで、相続人である長女と長男が父親の遺産をどのように分けるかを話し合う遺産分割協議を
する必要があります。ところが、ここで問題があります。
長女の取り分についても、長女の替わりに長男が成年後見人として、遺産分割のための意思表
示・主張をすることになります。
すると長男は、自分自身の分と長女の分、双方について、意思表示・主張することができること
になってしまい、自分自身の利益をより多くするための自由な意思決定が可能になってしまいま
す。このような状態になることを「利益相反」関係になる、といいます。
この状態を回避して、遺産分割の適正な手続きを確保するには二つの方法があります。
(ア)特別代理人の選任
長女の代わりに遺産分割の協議において意思表示をする特別代理人を家庭裁判所に選任して
もらい、その特別代理人が遺産分割協議の意思表示をする。
(イ)成年後見監督人の選任
長女の成年後見人である長男を監督する成年後見監督人を家庭裁判所に選任してもらい、成
年後見監督人が遺産分割のための意思表示をする。
本事案においては、弊事務所代表が長男の知り合いだったため、長男より特別代理人への就任を要
請されました。
②特別代理人選任の申立て
弊事務所代表は、以下の内容の遺産分割協議書(案)を作成し、これを特別代理人選任申立書と
共に家庭裁判所に送付しました。
・自宅は長男が相続
・預貯金は長女が相続
・長男から長女に代償金として220万円を支払う。
ここで、代償金の額を220万円としたのには、重大な理由があります。
後見人が付された被後見人は、遺産分割において法定相続分を確保しなければならない、とされ
ています。法律で定められているわけではありませんが、慣行としてそのように扱われており、
家庭裁判所も、特別代理人選任の審判にあたって最も重視する点です。
本事案においては、長男が相続する自宅の評価額と長女が相続する預貯金の評価額を比較検討し
て、代償金を220万円とすれば、長女が法定相続分(2分の1)を確保できるので、そのようにし
て遺産分割協議の案を作成し、家庭裁判所に特別代理人選任の審判を出してもらうことができま
した。
そして、実際に、特別代理人として、長男と遺産分割協議を行い、それに基づき、相続登記、預 貯金の払戻しの相続手続きも履行しました。