【事案の概要・解決までの経緯】
令和6年7月に、ある相談者より、遺産分割調停(注1)調書による相続登記を依頼されました。
遺産分割調停の申立人は相続人C、相手方は相続人E及び相続人Fで、被相続人A名義の不動産の名
義を誰が相続するかを話し合いました。
被相続人Aの相続関係説明図は下記のとおりです。
被相続人 A名義の不動産は、兵庫と京都にあります。
被相続人 Aの名義である不動産について、遺産分割調停により、Cが8分の4、Eが8分の1、Fが
8分の3の持分で相続することで合意が成立しました。
調停調書には、その結果のみが記載されています。
しかし、相談者に事情を伺ってみると、実際には、調停で合意された、この持分割合は、順次、
A、D、Bの順で死亡した結果(上図参照)、C、E、Fが取得することになる法定相続分に等しいこ
とがわかりました。
弊事務所では、以下の点に疑義を抱いたため、相続登記を申請すべき兵庫と京都の法務局に相談し
ました。
①調停で合意され、調停調書に記載されている以上、結果のみの1回の相続登記で登記するというこ
とでよいか?
②それとも合意された持分割合は、上記の経緯で取得された法定相続分に等しいことを考えれば、そ
の経過を忠実になぞる3件の相続登記を申請することが必要か?
兵庫の法務局は、②の見解を指示し、京都の法務局は①の手続きに同意しました。
同じ被相続人の不動産を違う方法で登記することは、勿論、望ましくないため、兵庫と京都の法務
局で話し合ってもらい、結論として、②の方法で登記すべきということになり、②の方法で登記を
履行しました。
では、なぜ、最終的に②の方法で登記すべきという判断がなされたのでしょうか?
数次相続(注2)で中間省略登記(注3)認められる条件は、以下の2つの場合に限られているから
です。
(ア) 中間の相続人が最初から一人であった場合
(イ) 中間の相続人が複数名いたが、相続放棄や遺産分割協議などでその中の一人が相続した
場合
上記の「被相続人A 相続関係図」を再度、ご覧ください。
中間の相続人兼被相続人である、D(長男)、B(妻)は、共に上記、(ア)(イ)の要件を満たして
いません。
また、実際に生じた権利関係や物理的状況の事実経過を、そのまま公の帳簿に記録すべきであると
いう、不動産登記の原則に照らせば、順次発生した相続に対して、3件の登記を申請、記録して公
示すべきということになったわけです。
但し、本事案においては、兵庫と京都の法務局でも見解が分かれたように、遺産分割調停で決定さ
れた以上、その結果のみで登記することも、明らかにおかしいとも言えず、判定は微妙であること
を付言しておきます。
※注1 遺産分割調停
・・・相続人同士で遺産の分け方がまとまらないときに、家庭裁判所で話し合う手続き。
家庭裁判所に調停を申し立てた人を「申立人」、申し立てられた相続人を「相手方」
という。
2 数次相続
・・・最初の相続手続きが終わる前に、その相続人が亡くなり、さらに次の相続が発生す
ること。
3 中間省略登記
・・・本来はA→B→Cと順に移転登記すべきところを、Bを飛ばしてA→Cへ直接所有権移転
登記をすること。